美の女神との輪舞 2007
 この地域での4年ぶりの作品発表です。
 41年間のローマ暮らしを引き払って、倉敷は沙美の渚に居座ってから丸々3年。当人は当年、77才の喜寿とやら。やって置かなければならない事ごとを、次々膨らませては一人忙しがって居る。と言って、急ぐでも無く、苛立ちも無い。ま、流れるままにと言ったところか
 創作も雑事も根っこは一つで、どちらも手が抜けない。そんな事がうれしくて夢中。だんだんと感覚も大きなうねりで広がり、現実、非現実の境界も立ち消えて、その間を自在に往来し、別次元、別空間を旅しているよう。
 且つては、きつい自縛で身をそぐように己を律しての創作も、生環上の自己資質を自得して、何時からか呪縛からも解放され、お構いなしの自由、奔放さが大きな勇気づけとなる。
 目下は、根源的な天然、自然、宇宙の「氣」を掴めないものかと。
 創作には、それなりの創意する努力、耐える粘り、そして、一番大事な事は美神・女神と出会えるかどうかが、重要な鍵。
 制作に没頭しているとき、己の存在も構えも力みも無い、時空を超えての無我の境地に至る。そんなとき、初めての世界、空間に踏み込む決断と勇気を促すべく、そっと優しく背を押してくれる女神の存在。
 滅多に無い事だが、全身がキーンと凍る思いの会心作が生まれ出会えた折なぞ、ひしひしと背後に美の女神の存在を温もりとして実感し、深い感謝の念とともに彼女と踊り舞っている夢が続く。

高橋 秀
沙美の渚にて、2007年 盛夏

「高橋 秀 新作展2007」
(天満屋岡山店/広島八丁堀店/福山店)カタログより